力の差
A text introduction
夏候惇×オリキャラ葵亜


夏候惇・・・




悔しい・・・・私はあっさりと敵の手に落ちた
負ける気はしなかった



殺意も殺気も感じなかった
あの男・・・隻眼の男「夏候惇」は名前だけが走り大した男ではない




そう思って戦いに挑んだ私の負けなんだろう





勝てない相手ではなかったはず
そう思う私は・・・・矢張り負け?





何故あの男は敵兵の私を何時までも処罰せずに此処に置く・・・?







私とて兵
命をかけ戦場に立った




捕らえられたまま生き恥を曝してダラダラと生き延びるのは御免だ






殺るなら早く




殺れないなら・・・・・・・私に剣を・・・









命など惜しくはない





怪我の手当てをされ誰のものかもわからない床に寝かされ
幾日が過ぎた?






「いい加減体も鈍るな・・・・誰が来るわけでもなし・・・」





あの男は何が目的だ?
体を回復させ拷問で何か口を割らせるつもりなのか?





「ふっ・・・残念だな。私は何も知らない・・・・知っていても口にはしない」






「ほぉ良い度胸だ」




不覚





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・この私が気配すら感じ取れなかった








    

       「悪趣味だな」





「それが俺の楽しみだ」






                                   




            ニヤリと笑った顔・・・自分の力を過信しているわけでもない




それだけの力があるのだろう






「私をどうするつもりだ」



「どうされたい?」





「魏は妙な国だな。捕虜に自分の身の振り方を決めさせるのか?」







「さあな。で?どうする」








「殺せ。戦場に立った時から私の命は主に預けてある・・・負けた私の身の振り方など決まっている事。死・・・あるのみ」





「怖くないのか?」








「怖がっていたら戦など出れぬだろう。お前もそうだろう?」







夏候惇は少し考えたような素振りを見せたがそれは一瞬だった







そして・・・・・・・間・・・・






     「俺は怖いぞ」







「な・・・・何を言う?お前が死を恐れるなど有りえない」







「褒め言葉とは思えんな」




               そう言いながらも可笑しそうに笑う



             


「私には意味がわからないな」






夏候惇はすぐ側に来た
そして鋭い目で葵亜を見つめた




葵亜はその視線に耐え切る事は出来なかった





ふっ視線をそらすと顎をつかまえられ視線が絡み合う









「命を無駄にして戦が出来るわけない。命の大切さを知らずして戦に出るのは無謀な事だな」






「・・・・・な・・・・・勝手な言い分だな」






「違うとは言わせんぞ」







・・・・・・・・そうだな・・・・私は負けたのだ・・・・お前に

お前が正しいのかもしれない








「・・・・・そうだな」







「何だ豪く静かだな」






「私の事はどうでも良い。早く処分を決めてくれ」





もう耐えれない




お前のその視線は・・・・・・・何故か心が騒ぐ









「中々良い度胸だ。流石だな呂布の配下だけである」









「くっ・・・・」







「アイツは死んだぞ」





「わかっている・・・」




「仕えるべき主が居なくては辛かろうな」







・・・・・・・




「わかっているなら早く」





「そう死に急ぐな。少しは大人しく話でも楽しまんか?」









「・・・・・・・楽しむ余裕などあるはずない」







「認めたか?」






「何をだ?」





「死ぬのは怖いか?主と同じ道を行くのは怖いか?」









「・・・・・馬鹿にするな」





悔しい・・・・・体が震える
声が震える





見透かされている・・・・あの目に全て・・・・







「そうか・・・なら・・・覚悟は良いか?」






「ああ」




「何か言い残す事はあるか?あれば伝えるが」






「要らぬ・・・」






涙・・・・・・・・





                  ぽつりと零れた涙が全てを伝えた



口にせずとも葵亜の気持ちを静かに伝えた







                         「中々しぶとい」






「・・・・・っ・・・・」








                          
「体を休めろ。そして回復したらお前は俺の護衛兵だ」







「なっ・・・情けなど」




「煩いわ。お前は俺の捕らえた捕虜だ。口答えはさせんぞ」








「・・・・・・助けたつもりか?」








「早く元気になれ、今のままでは俺の寝首さえ掻けんぞ?」






「私にお前を殺すチャンスを渡すか?」








「お前に出来るか?」






「面白い。せいぜい今のうちに遊んでおけ」






夏候惇は背を向けて部屋を後にする





・・・・いつでも来い





お前は俺のもの













「俺はしつこいらしいからな。逃がしはせん葵亜」








あの戦場で一目見たときから


                  お前の     全ては俺のもの






          戦は今はじまったばかり