その日は望美の悲鳴で皆の目が覚めた
ここで付け加えておくが望美の悲鳴で起こされたのは
朔以外の人物だけである
目が覚めた望美の部屋にあったのは自分が何時も着ているはずの服
だが・・・どう見ても其れは「コレ・・・何よ?」と言いたくなるほどに際どい衣装と化していた。
「誰が着るのよ・・・・こんなの・・・」
誰も居ない部屋でぶつぶつ文句を言っていると背後から「望美以外誰が居るのよ?」と笑い声と共に聞こえてきた声
振り向かなくても誰かは嫌になるほどわかる
「・・・・・・朔?」
「何?」
「こんなの着てたら戦闘なんて出来ないよ・・・」
「大丈夫よ。貴女の事は私が守ってあげるから」
「男前だね・・・朔」
「ふふっありがと」
「ソコ・・・喜ぶところではナイはず・・・」
「あら・・・そうなの?」
ダメだ・・・昨夜から朔は一本どころか何本も切れている
こうなったら予備の服を・・・
そう思って望美が押入れを探ろうとすると朔が壁に凭れかかって不敵な笑みを見せた。
「嫌な予感・・・もしかして・・・・?」
「勘が良いわね。もちろん隠してあるわよ」
「・・・・無理」
「何が?」
「こんなの着れないって!!」
「似合うわよ。きっと」
優しく微笑んでいるはずなのに何故こんなに朔の笑顔が怖い
冷や汗が出るってこんな感じなんだなぁ
と、ぼんやり考えているうちに朔の手は望美の夜着にかかっており
次々と剥ぎ取られていく
「ちょ・・・ちょっと朔!!」
「一日だけよ。諦めたら?それに一睡もせずに頑張った私のためにも着て欲しいな」
朔は望美の性格を良く知っている
こう言われた望美が絶対ダメと言えるはずもなく結局は朔が手間をかけ作り直した新衣装を身につける事になる
しぶしぶながら身につけたソレは現代では別に気に留める事も無いかもしれないが望美にしてみればソレは短すぎるスカート
腕を上げれば背中、腹部がチラリと見え
そして・・・最大の難関は
「何コレッ!!屈んだら見えるでしょ?」
「見えない見えない。仮に見えても別に減るわけでもないし良いじゃない」
そんな・・・人事だと思って・・・
「なら朔が着たら?」
此処で朔が嫌がれば「自分が嫌な物を人に着せるな」と言える
と・・・考えた望美の最後の手段だった
だが朔は少し考え込んだ後・・・
「残念だわ。私も身につけてみたいけど・・・でも出家している私には無理だわ・・・」そう言って溜息をついた
「・・・・・・・ずるい」
何を言っても敵わない
ヒノエと弁慶以外にこんなにも手強い人物が居たのかとつくづく感じた望美だった
朔は望美の全身を見ると満足そうに微笑む
「可愛いし色っぽいわよ」
「・・・・・そ・・・・そうかな?」
「これならヒノエ殿だけでなく色んな男達がエサに喰らい付きそうね」
「く・・・・喰らい付くって・・・・それヤバイし・・・でも無いよね。そんな事」
「望美の欠点は自分の魅力を知らない事と自信が無い事ね」
「だって朔みたいに頭良いわけでもないし・・・美人でもないし・・・」
俯いてぶつぶつと呟く望美を見て朔は「私は可愛げないだけよ」
そう言ってふふっと笑った
望美は顔を赤くしながら「私が男だったら朔の事凄く好きになると思う」
そう言って上目遣いで朔の顔を羨ましげに見つめた後に吐息をはいた
朔はそんな望美を見た後・・・
突然大声を出した
「それよっ!!」
「うわっ!!何?」
「今の最高!!」
「へっ?」
「さっきの上目遣い女の私でもクラッときたわよ。ヒノエ殿にも使いなさい。絶対鼻息荒くして飛び込んでくるわよ」
望美は返す言葉も無くハハハッと笑う
こんな性格だったのね・・・・朔
鼻息って・・・・クラッって・・・飛び込んできてもらっても・・・
複雑な心境のまま朔を見つめる望美の表情に朔は『案外いけるわかもね。この策は・・・』
と感じていた