03-2

A text introduction
意識しない誘惑は効果倍増


此処最近・・・・寝付けない



欠伸をしながら皆の集まる場所にやってきたヒノエは思わず目を見開き
そして固まった



それを見て笑うものなど誰も居ない


いつの間にか姿を消した譲は・・・・
赤い顔したまま目を逸らし損ねている九郎は・・・




背を向けてじっと立っているだけの敦盛は・・・




朔に何やら言っている景時は・・・



何で注意しないんだ?



それが今のヒノエの考えで
唯一冷静そうな顔をしている弁慶も視線を泳がせ
何やら怪しげな様子で





「・・・・・望美・・・・」
小さく呟いたヒノエに誰もが同情の目を向け




まるで『後は頼んだ・・・』と言わんばかりに自分を見つめるリズヴァーンの視線さえも・・・今のヒノエには大きなプレッシャーで



ヒノエの存在に気づいた朔が望美の肩を叩きヒノエを指差すと
望美は満面笑みでヒノエの側にやってきた



その歩く姿は足を気にしてか
いつもより優雅で
手で押さえながら歩いているが時折チラッと見える素足に
遠のきそうになる意識を必死に堪え


一点に集中しそうになる視線を何とか泳がせ・・・
『成るほど・・・弁慶の視線の意味がわかった・・・』
と・・・・思いつつ苦笑いすると弁慶もそれに気づいたのか
首をふって微かに笑っていた



「おはようヒノエ君」



「おはよう姫君。今日はずいぶんと大胆だね」



「・・・・だって朔が・・・やっぱり変・・・だよね?」



「困った姫君達だね。俺をどうしたいのかな?」


「別にどうもしたくないけど・・・だって・・・だって・・・」




「ああ・・・ごめん。望美は悪くないのにね」




ヒノエの複雑な笑みは望美を不安にさせ・・・
望美は赤らんだ顔で「やっぱり着替えてくるよ」


そう言って走り去ろうとした時


「望美・・・・ごめん。俺が余裕なさすぎるから悪いんだ。そのままで可愛いよ」


そう言ってヒノエが微笑むと望美は嬉しそうに笑って


「本当?」と目を大きく見開きヒノエを見上げた






「やべっ・・・・」
ここが人前だという事を忘れてしまいそうになる

思わず伸ばした手は・・・一度抱きしめてしまえば二度と望美を離す事が出来なくなりそうで・・・


行き先のなくなった腕は自然と望美の頬に移動し
優しく触れた手の温もりに


うっとりとした表情をした望美が可愛くて
いつにない艶を感じて・・・



「・・・・・罪な女だね・・・」そう言ったヒノエは我慢の限界を感じ




気づけば腕は望美を抱きしめていて


「ヒノエ君?・・・ちょっ・・・ちよっと皆見てるってば!!」
突然の行為に驚いた望美が抵抗しても



確りと絡みついた腕は離れようとせず


「・・・・ごめん・・・限界」
そう言ったヒノエは望美の唇に舌を這わせ・・・



唇を重ねた



やばい・・・・くちづけだけでこんなにも熱くなったのは初めてだ




このまま・・・・望美を




角度を変えては望美の唇全てを味わっているヒノエに対し
周りの目は以外にも優しかった




「暫く二人にしてあげましょう」
朔がそう言うと皆は背を向けその場から去っていった





「んっ・・・・だめっ・・・ダメだよ・・・」


ヒノエは唇を重ねたまま優しく微笑んで「お前のせいだよ」
そう言って深くくちづけをする



「開いて・・・・」


「えっ?」
何の事かわからず聞き返した望美にヒノエはニコリと笑って「合格」
そう言うとスルリと舌をすべりこませてきた




「んっ・・・・ふぅ・・・・・・」




絡み合う舌の音がピチャピチャと響く
激しいくちづけに溢れ出した唾液さえも愛しくて
ヒノエは唇を離すと望美の唇や顎・・・そして首筋にまで舌を這わせ



「ひゃぁ・・・」



「甘い・・・・お前は甘いね・・・・」




そう言って再び唇を重ねようとした時・・・




「バカァーーーー!!」



バチンと叩かれた頬に痛みは感じなかったが
涙を流す望美を見てチクリと痛んだ胸・・・




「望美・・・・ごめん・・・・」



「皆がいたのに・・・ヤダッって言ったのに・・・」
泣きながらそう訴えてくる望美に「お前がいけないんだ・・・我慢の限界だったんだ」・・・とは言えず・・・・




「・・・・私・・・・帰る」
そう言った望美を黙って見送ることしか出来なかったヒノエは
望美の姿が視界から消えると



「クソッ」・・・・舌打ちして腰を下ろした





「しくじりましたか?」


「・・・・・煩いね・・・」



「綺麗な足をしていると思いませんか?」



「・・・・弁慶・・・・」



「あの足が絡みついてきた所を想像しませんでしたか?」



「あいつは俺のものだ!!」
ヒノエは怒りを隠せず弁慶につかみかかり



だが弁慶は計算の上だったのか・・・
「ずいぶん熱くなってますね。少し冷静になったらどうですか?」
と、冷静に言いヒノエに笑いかけた




「・・・・・朔ちゃんは何を考えてるんだろうね・・・・」



「多分・・・君を骨抜きにしようとしているんでしょう」




「・・・・ふっ・・・・これ以上骨抜きになったら俺は何も出来なくなるのを知っての事・・・かな?」



「さぁ・・・どうでしょう」





「あいつは・・・・否・・・」



「どうしました?」


「何でもないさ・・・さてっ」



ヒノエは土を払うと弁慶に背を向け手を振りながら
「姫君のご機嫌取りに伺うとするよ」
そう言って望美の姿を探しに行く




「大変ですね・・・・」そう言った弁慶は苦笑いし




それが聞こえたのか・・・?
ヒノエは振り向くことなく「女は理解出来ない所が魅力・・・だよな」



そう言ってゆっくりと歩き出した





ああ・・・女は魔物

あんなに優しい朔ちゃんも・・・
弁慶以上に策を練るのが大好きで



あんなにも黒い部分を隠し持っていたとは・・・


ヒノエは苦笑いしながら「ホント・・・困った姫君達だね」
と・・・ため息をついた




辛い事があると・・・
泣きたいときがあると必ず立ち寄る望美の秘密の場所



大きな木の下で望美は座り込んでいた



「・・・・嫌じゃなかったんだよ・・・・でもね・・・」



微かに聞こえる呟きも
赤くなったり・・・ため息をついたり



時折怒った顔をしてみたり・・・・



何時まで見ていても飽きる事はないだろう



それでもヒノエは音を立てずに近寄ると「ごめんな」と・・・
耳元に囁き




望美が逃げ出す前に背中から抱きしめた



「キャッ」



「俺だよ」


「ヤダッ!!離してよ私怒ってるんだからね」


「ん。わかってる」



「なら離してよ」


「ごめん。それだけは無理」


「何でよ」



「だって逃げるだろ?」



「当たり前でしょ」


「だったらダメ。逃がさないと決めたから・・・・お前はもう俺のものだよ」



「わ・・・・私は私のものだよ」




「残念。なら俺のものにしなくちゃね」
そう言ったヒノエは望美の体を軽々と抱き上げ



驚いた望美が悲鳴を上げるとクスクスと笑って


「怒った?」
そう言って優しく微笑んだ



その笑顔を見れば望美も何も言えず
あまりに綺麗で・・・優しい笑顔につられて笑った望美は
悪あがきでしかないが・・・

そっぽを向いて「二度とあんな事しないでよ」と・・・赤く染まった頬を隠し




「下ろして」
そう言って・・・ヒノエはそんな望美を下ろしたくないと感じながらも
そっと下ろしてやる




望美は木に背中を預け


空を仰ぐように見つめ


「わかってるんだよ・・・ヒノエ君の気持ち・・・・少しだけ・・・ね」
と小さく呟き



「ああ」



ヒノエは隣に座ると

気が抜けたのか・・・安心したのか・・・
組んだ足を堂々と見せ付けている望美に「綺麗だね」
そう言って





「やっ・・・・」
自分の姿に気づいた望美が逃げようとすると足首を握ったヒノエは



「姫君が話してくれた人魚姫もこんなに綺麗だったのかな」
そう言ってその足にくちづけた





「やだっ」



「いつか・・・・」




この足を絡ませて・・・・みたい・・・



そう願いながら解放すると・・・・



「ヒノエ君の変態!!」と・・・再び怒り出した望美にヒノエは笑って



「お前がいけないんだぜ」
そう言って望美を抱きしめた




まだまだ続くだろう朔の陰謀に・・・
ヒノエは悩みながらも




「こんな特典がついてくるなら・・・・」



「えっ?」

小さな呟きに耳を傾けた望美に




「何でもないさ」
と笑ったヒノエだが




どんな試練にもつきあってやるさ・・・・と一人胸の中で呟いていた