013 // 戦闘開始

魅了された

美という言葉で語ろうとすれば無理がある
二喬や個性的な美を兼ね備えた尚香からすれば望美は平凡


だが望美は人を引き付ける何かがある
その何かとは・・・と言われれば答えることは出来ないが




誰よりも人目を引く女は今の呉には望美しか居ないだろう
孫堅はそう感じていた。


呉に現れた娘は頑なな蕾でなく今正に咲かんとする華だった



久しぶりに浮ついた気分になる
それは初めて望美を見たあの日以来無かった事


あの時・・・・流れる涙に気づかず唇をかみ締めた娘に目を奪われた
この娘の笑顔や声を聞きたい


俺の側で笑って欲しい。そう感じたのだ



「俺の執務室で良いな」と望美を連れ添い急ぎ足
それはまるで望美と二人きりの時間を邪魔されたくない。



そう見える光景でもあった。




望美の背をとんっと押し椅子をすすめると孫堅は卓に向かう

「茶など煎れた事ない。文句はなしだぞ」


「そうでしょうね」



「そう年寄りを苛めるな」と笑う孫堅


どこが年寄りだ
誰よりも若々しく見える男に望美は「年寄りとして見て欲しいと?」と笑ってみせる


その笑顔は反則だな
男の気持ちをかき乱す笑みだぞ
わかっているのか



そんな思いを胸に秘め孫堅は何時ものように余裕の顔で


「思ったより骨が折れる女だな」と笑って見せるのだった