015 // 意味などない

鉄の味がする口づけは初めてだと・・・そう思っていた
血を吸い取った剣を舐めたらこんな味がするのだろうか


望美の唇を味わいながらも孫堅は、そう考えていた
頑なな蕾は花開こうとしている華

しかし棘がある


受け入れようとしない望美の唇を無理矢理こじ開けようとすれば
何の遠慮もなしに噛み付かれた


痛い
噛まれたのだから、それは当然の事。



他の者なら孫堅相手にそんな事はしない
だが望美は違っていた
その大胆さに孫堅は望美がいかに嫌がっているかわかった


「お前は・・・俺が怖くないのか」

漸く離れた唇
しかし身体は密着し孫堅の高まった雄を直に感じる
望美は赤面した顔で

怒りを露にした顔で


「怖いに決まってます」と怒鳴りつける


「ははは。俺の方が怖い」と笑う孫堅はどこまでも強く
誰よりも余裕を持った男だった。



そんな男にきつく抱きしめられ
無理矢理奪われた唇は血に滲み腫れていた


「なんの意味があるんです」


「ん?」


「こんな事・・・何の意味があるんですか」
涙を流し孫堅をじっと見つめる望美の瞳の奥に感じたもの



それは悲痛だった



「お前は過去に辛い思いでもしたのか」と孫堅は問う


その問いに望美は「過去も今も同じです。・・・・」そう答え


「離して下さいませんか・・・・」と突如冷静になった其の声の持ち主に孫堅は何も言えず



「悪かったな」と、そう言って


静かに離れていく望美を見つめるだけだった