018 // 理解できなくとも其れで良い

何故だ・・・
胸の中にいる女
腕に抱いているはずの女に凌統は生身の女を抱いている気がしなかった


涙に濡れた頬
時折聞こえる鼻をすする音
震える身体は実在する証拠


「誰だ・・・誰なんだろうね」


凌統はそう問う



望美は声も出さずに顔をあげ視線を合わせた




「・・・・なんでアンタみたいな女が声も出さずに泣く事を覚えたんだ」



「・・・・わ・・・私は・・・・」


「言いたくないなら別にいいけどね。まあ・・・なんつーの俺の前では無理しなくて良いからさ」と・・・
凌統は優しく微笑んだ


妹とは違う
女として意識している・・・否・・・・違う


自分の感情がつかみきれず苛立ちを感じるが今この時は・・・・
この女を一人にしたくなかった。


一人で泣かせたくなかったのだ。



「凌統様は優しいですね」


漸く聞けた其の声


−−−−−−様−−−−−−




慣れているはず・・・・


将軍として・・・・名のある武将として乱世に身を置く立場であるからこその敬称


だが望美に凌統様と言われ感じたことは


出来れば・・・・公績と呼んで欲しいだった

「あのさ。今更じゃない?そろそろ公績って呼んでも良いと思うよ」



「でも・・・・それは・・・・」

「別に俺のものになれとか言ってるわけじゃないし。」




「・・・・・公績・・・・殿」



「ははは・・・・あんたねー」

取ってつけた殿は必要ないっつーの



だが一歩進んだ。そんな感じがした凌統は「まっ良いとしましょうか」と笑って望美の髪にそっと触れ



「あんたって女って感じしないけど何なんだろうね。変な魅力あるよね」と・・・にやりと笑ったのだった