25 // 乱れる思い

出来るなら-----------



-----出来る事なら---------思い出したくなかった



敵対する者同士の恋は思わぬ不幸を招いた



身に宿った小さな命すら守る事も出来なかった
無理矢理奪われた身体も
強引に奪われた心も-----
あの日、海の泡になってしまった。


「楽しかったぜ。源氏の神子」
そう言って笑みを見せながら海へと堕ちていく知盛の手は「お前も来いよ」と言っているようで



自然と身体が吸い込まれた


波しぶきが立ち
人々の悲鳴が聞こえる
必死に知盛を追いかけ手を伸ばす



一瞬触れたかと思った其の手はあっけなく離れていく

知盛---------





「この馬鹿っ」

引き上げられた望美に投げかけられた言葉は心配する声でもなく
同情する声でもなく八葉からの怒りの声だった



そう。-------私は馬鹿----なんだよ
だって好きになったんだ
敵でも良かったんだ

本当に好きで------愛して-----たの




何故-------どうして-------
敵だから結ばれなかったの?



「望美-----あなた」



「朔・・・・・私・・・・」



「血が------」


「嫌ァーーーーーーーーー」




-----------ごめんね。





もう信じない。
誰もいらない
恋なんて-----------繋がりなんて--------全てが悪戯な神の仕業


飽きたら全てを奪われるんだから



それから先は真っ暗な闇だった


おぎゃーおぎゃーと泣き声が聞こえる




「赤ちゃん-----?」その声につられるように動いた望美の足は空を舞う



「えっ?」



すーっ。と堕ちる


いいや。これで死ねるなら------と一瞬思った。


だが其れは実現しない望美の悲しき願い




又-------歪んだ時は望美の時を侵食した


そして-----今動き出した時は呉に舞い降りた天女の歓迎の宴の場へと進んだのだった。