27 // 確かに存在する

自分という存在が今この国にどんな影響を与えているか------
考えもしないのだろうか

誰が見捨てて置けるだろうか----この華を-----


陸遜は美しく着飾った望美をじっと見つめる
普通のものなら陸遜の視線に耐え切れず視線を逸らすか
頬を染める


だが------


望美は「どうしました」と冷静だ


思わず可笑しくなった


変わった人だ------そう表現するしかなかった。


「なんでもありません。行きましょうか」と手を差し伸べれば

「一人で歩けますから」と------優しさの欠片も無いくらい冷たく言い放つ



「困った方ですよね」と陸遜が笑えば蝶蘭という女官が苦く笑う



「行ってくるね」

望美は思い足取りで部屋を後にする
迎えに来た陸遜の存在を忘れたのか----と思えるくらい其の存在を無視し
一人歩く背中は


近寄らないで-------と言っているようだ。



だが陸遜は足を速め望美の隣に-----そして

「誰しも一人です-----しかし今の貴女は一人というより全てを拒否したいがために無理をしているように見えますね」と言葉を吐く。



「そうだよ」



望美の答えは簡単だった。
否定しようもない。陸遜の言った事は真実だから-----





望美は陸遜の顔をじっと見つめると「無理をして何がいけないの?私は私の好きにするわ----貴方達には関係ない。私が邪魔なら斬れば良い-----でも----ただでは斬らせないけど」と-----




ぞっとする程の表情のない
まるで生きた死体のような顔で陸遜に吐き捨てた




「-------望美殿----どうしてですか。」




こんなに酷くなかった



付き合いにくい女人だと思っていたが時折見せる笑顔は綺麗で
ほっておけない清らかさだった


どこで何が変わったのか------

今の望美は初めてあったあの頃よりも人を寄せ付けない







「だって私は存在しない人間だから----本当は此処にいるべき人間じゃないから---」と口にする


そして------





まるで存在しない何かを探すように空を見上げ「帰りたい-----」そう呟いたのだった