30 // 開花

二人は照れくさそうに顔を見合わせる
「えへへ」


「大好き。大好きだよ小喬」

「のぞみぃぃーーー」

初めて言われた其の言葉。
誰に言われるよりも嬉しいと感じた


小喬はこれが望美なんだと
本当はこんなにも素直で可愛くて優しい気持ちを持った女の子なんだと思った。


思わず抱きしめて「大嫌いなんて言ってゴメンネ。本当は大好きなんだよ」と望美の身体をぎゅっと抱きしめる。

「うん。うん---ありがとう」




傍から見れば何なんだ----という光景だが
二人は漸く和解したのだ。



本当は話すつもりなどなかった事
それでも口にしたのは望美も救われたいと。思っていたからなのだろう



「帰ろう」
「そうだね」



目を赤くした小喬を連れて帰れば反感を買いそうだ。と、思いながらも望美は小喬と手を繋ぎ宴の場に戻っていく。


現れた二人に視線は集中する
だが誰も何も言わなかった。


「おお。漸く戻ってきたか」

孫堅の声が望美を呼び戻す。
小喬が慌てて言う。「望美に変な事したら私が許さないんだからね」と-----


なんて事を---と一瞬思った。
周瑜という夫が側に居ても相手は孫堅----下手すれば其の一言で首が飛ぶ事もあるのだ



だが---小喬らしいと感じた。
そう思うと可笑しくなり「ぷっ。ははは----信じられない小喬ってば。」と----久しぶりに声を出して笑っていた。


「ひっどーい。望美のために言ったのにー」とむくれる小喬に「はいはい。ごめんね」と望美が頭を撫でる

小喬は「もー。何でみんな私の頭撫でるのかなー?そんな子供じゃないのに」と捻くれた
それでも望美は「可愛いから」と言いながら
小喬の頭を撫で続け


「こらーーー」と小喬に怒られたのだった。