32 // 一人だけでなく

凌統は望美の側に行った
だが----私は----と苦い顔をする周瑜


自分は何故行けないのだ
別にやましさなどない
我妻の側に居て何が悪い。そう思いながらも周瑜は動けずにいた。




小喬と望美の会話を遮るように中に入った凌統は親しげに望美の髪に触れる
酒でも飲んだのか薄っすらと色づいた頬で凌統を拒む仕草は女らしく
ドキリとする。



初めて見た美しく着飾った望美に声も出ないほど驚いた。
こんなにも変化する女は初めて見た。
いつもツンとした女がこんなも変わるとは---と


否------本来の望美はそうなのだろう。と、周瑜は思った。



小喬は正直な女だ。


誰とでも仲良く-----そう見える女が小喬

だが----子供のような所もあるが心を開くのに時間がかかる
その小喬が望美には直ぐ打ち解け
そして望美との関係に悩み涙を流し-----自分にさえ其の本心を話さず



夜も一人で過ごしていた。


何度もどうしたのか---と
悩みがあるのか----と周瑜は妻に聞いた
それでも小喬はこれは私と望美の問題だから---と其の悩みさえ教えてくれず


周瑜は望美だけでなく最愛の妻にまでも一線を引かれたようで少しだけ寂しい気持ちを抱いていたのだった。





「なんだよ。その顔」


「孫策。私は如何したら良いのだろうか」

「そんな事は自分で考えろ」


冷たく突き放す孫策に冷たい目を向けると孫策は笑っていた


「バーカ。何女みたいな事してやがる。好きなんだろアイツの事」


「わからないのだ----私は----」



「あのなー難しく考えるな。どうせお前の事だ。私には小喬がいるのだから--とか考えてるんだろ」



「しかし・・・・それは事実だ」


「だからーよ。別に罪じゃねーだろ?女を好きになるのも欲しいと思うのも。それは男として当然だろうが」



孫策は実に単純だった
好きだから欲しい。
男としての欲求を誰にでもぶつける。


大喬を得たときも----だ。


「君が羨ましい---な」

「難しく考えるな。小喬はお前が思っているより大人だ」




そう言われ周瑜は小喬を見つめる



凌統から望美を遠ざけようとしている姿は望美を守るためなのだろう

「あれは私の気持ちを知っているのだ----」


「ああ。聞いた」


「何?」


「望美と周瑜様を仲良くさせたいから協力しろ」と言われた。


「そーしねーとお姉ちゃんに孫策様の悪口沢山いっちゃうからねー。だとよ」と孫策は苦笑いする

「面白い女じゃねーか」


「ふっ。ああ----だからこそ欲しいと願い手に入れたのだ。」


だからこそ裏切れない
だからこそ----大切にしたいのだ-----




「でもよ好きなんだろ」



「春日か----」


「ああ」



「そうだな-----」



「行けっ」


「孫策」


「考えるより行動に移せ。なっ」と----周瑜の背を押す孫策の手は力強かった


馬鹿な事だ----
そう思いながらも周瑜の足は止まる事なく望美の元へと向かっていたのだった。