33 // すれ違いながらも

いい加減にしろ----と言っても離れない手にイライラする
今日のアンタは綺麗だな


寒気がする口先だけの其の言葉
そう思いながらも赤面する事を抑える事など出来ない


こんなにも強引に口説かれたことはない
こんなにも-------人が居る前で身体に触れられたことなどないのだから


知盛とは人知れず隠れての恋だった





望美の抵抗などないに等しい
だが小喬の攻撃は凄まじい
扇子で叩く
言葉で怒りを表現する


ふと思い出した存在。
いつも穏やかに笑い望美の側に居てくれた存在を-----


姉のように守ってくれたその存在
今はどうしているのか----と



こんなにも違う二人なのに何故か小喬と朔に似たようなものを感じた
それは望美を守ろうとしてくれる姿なのだろうか


そう考えていると小喬の嬉しそうな声が響いた。

「周瑜様ー」


「楽しんでいるか」


「勿論だよ。ねっ望美」と同意を求められ望美は返答に困ったが「はい」と応じ頭を下げる




「もー。何でそんな事するのー」


小喬は望美の態度が気に入らないようで怒り出す
そんな小喬に苦笑いし「落ち着くんだ」と周瑜が言えば「だってー」と口を尖らせ文句を言う其の姿に望美は笑みを浮かべた。



「笑うのだな」



「-----あっ。申し訳ありません」


「私は何も怒ってなどいない。ただ----美しいと感じたのだ」



ドキリ------胸が高鳴った。





言葉つまる瞬間

だから嫌なのだ----この人はこんなにも簡単に私の思考を奪うから----
望美は静まれ---静まれと念じ


そして凌統は歯軋りする。


目の前に居る女を奪われるのはごめんだ----と思った。




凌統は望美の手を強引につかむと

「まあ、なんつーの?お二人のお邪魔しても悪いから俺たちはこれで」と---望美を奪うように連れ去った




「ちょっとー」と叫ぶ小喬の声は次第に小さくなる





いくらなんでも失礼だろう。
そう思ったが正直助かった。



「いいんですか」


「あんただって嫌なんだろ」



「------別に」





「嘘がお上手な事で」と笑い凌統が立ち止まる。

「なんつーの?あんたって変な女だよな」



「----それはこっちの台詞」

「俺?俺はいたって普通の男ですよ」にやり笑うその顔に石でも投げたい。と----思ったが


「そうですね。そうでしょうとも」とだけ答え望美はその場に座り込んだ。


「おい。汚れるでしょうが」

「別に良い。二度と着たくないし」とムッとする声が子供みたいで可愛いと思った。




「ほんと変わった女」


「ねえ----私が何者か知りたい?」



突然の問い
全くこの女は---と思いながらも「別に。あんたはアンタだし?」と答えた



「ふっ。あはは確かにね」拍子抜けした
皆が皆、自分という存在に興味があると思っていた。


何処から来て----何者か。と----


だが目の前に居る男は関係ないと----私が私であれば良い。と、言っているようで
何となく嬉しくなった。



「公績。あんたって良い人だね」とふわり笑い凌統の手を包み込んだ望美は
小さい声ながらも「ありがとう」と伝え
その小さな手で凌統の手を包み込むように握ると


「これからも友達でいてね」と満面の笑みを見せたのだった。