36 // 好きなんだ---と

ぼんやりと空を眺める楽しさを久しぶりに感じた
何だかんだ言っても凌統は良い男だ。----そう思った


別に良いじゃないか
この世界に居ようと私は私なんだ
凌統は言ってくれた「あんたはあんただし---」と



小喬は言ってくれた。


私を守ってくれると----


別に守ってもらおうとは思わない。それでも嬉しかったのは事実


小喬の優しい思いに応えたい。と、望美は思ったのだ



「ねえ、私ね」


「んーどうした」


「好きな男居たんだ。----つーか、今も忘れられない男が居る」



なんとなくわかっていた事だった
それでも其の事実を認めたくない凌統は気づかないふりをしていた



冷静さを装いながら凌統は問う


「それで----その男は?」と----




「届かない場所に居るの----何時かは会えると嬉しいけどね」と笑った望美は苦痛に満ちていた
抱きしめて慰めたい
抱きしめて離したくない-----そう思いながらも何も出来ずに側にいる凌統の気持ちは



付け入る事はしたくない---と
他の男を思っている女を抱きしめる余裕などない。----



だったのだ