09 // 立場

うやむや



ふと考えた
私の立場は何だろう
流されついた呉の国で周瑜の下で職務をこなす日々
仕事として渡される書簡は面白い


色々な事がわかり教科書では教えてくれない様々な事がわかるから
兵法とは一つの双六みたいなものなんだ。と感じた


この時代の人達にそんな事を言えばバカにするな。と言われそうだが・・・
先手先手を狙い
たまには混乱を来たすような戦略を練り知恵を絞る


軍師は自分の持つ知を惜しげなく発揮する


その軍師の指示で武将達は立ち回る

周瑜や呂蒙、陸遜の話を聞けば
いずれ同盟国である蜀、魏に攻め込むつもりだと理解できる


私は・・・・どうするんだろう。

何の力も無い
 
あの頃と違って神子でもなく
怨霊もいない呉の国では役に立つはずも無い



元々史学は好きだ
三国の世界は好きで本を借り読み漁っていた時期もあった
だが変に知恵をつけなければ良かった。そう思う
先の見えている望美には何も助言など出来ない


お世話になっている


もし問い詰められたら私は何と言うだろう



歴史を変える事は出来ません


そう言えるだろうか


「今更・・・・だね」
今まで何をしてきた
時空跳躍を繰り返し受け入れたくない事実を塗り替えたではないか・・・


と、苦く笑う



「望美」



冷めてきた茶を手にしていた望美に声をかけてきたのは尚香だった
ハッとする笑顔
元気で明るい尚香に何度も助けられた


涙を流している場面を見られても尚香は黙って抱きしめてくれた
そんな尚香は望美にとって姉みたいな存在で気を許せる唯一の人物





「隣いいかしら」
「どうぞ。お茶用意するね」



温かい湯気が立ち上がる
こぽこぽと音を立てながら茶を注ぐ望美に尚香はいう



「望美は大丈夫だよね」と・・・



「何が?」


尚香らしくない言葉に嫌な予感がする


「私ね・・・劉備様の元へ行くわ」



・・・・・・・ああ。そうか



歴史は動き出したんだ・・・と、感じる



行くな。とも、そうなんだ・・・とも言えない望美に尚香は笑って


「とても素敵な方だから私は嬉しいのよ」と・・・・頬を染めて微笑んだ