〜鍋とおたま〜
またやってしまった
気付けば知盛の腕の中で・・・
流された・・・と反省しても
結局は問い詰めるつもりが抱かれてしまった
「何だ?」
「何でもない」
機嫌悪く答える望美を見、お前の考えていることなんて直にわかると・・・ニヤッと笑った知盛は
「俺には敵わないさ」と再び望美を組み敷いて
「ちょっと!!」焦った望美を鼻で笑い
「諦めろ」と、そう言って・・・
唇を重ねようとしたその時、ノックも無しに入ってきた男
それは弟の将臣だった
「あっ。ワリィ・・・最中か」と背を向けて「うっ・・・嘘・・・?」
見られた・・・
見られた・・・・
そのショックが大きかった望美は顔面蒼白
だが、知盛はそんな事などお構いなし
「気にするな」と続きを即したが
突然、飛んできたパンチは知盛の頬を直撃
「ッテェ・・・」
望美のこのパターンぐらい予測できるが
今日は望美の行動の方が知盛より一瞬早かったのか?
直撃を受けた頬を手でさすりながら
「・・・お前は獣か?」と呟いた・・・が
望美はふんっと鼻を鳴らすと「アンタには言われたくない」と言い
さっさと服を身につけて将臣の後を追っていた
「待ってよ!!将臣」
望美の呼びかけに振り向いた将臣は複雑そうな顔をしていた
そりゃー現場を見れば誰でも同じ反応するよね・・・と思った望美も次の瞬間には拳を握り締める事になるのだが・・・
そんな事を知るはずもない望美は・・・
「ごめん」と手を合わせ
「変な所見せちゃったね」と苦笑いし・・・
気にするな。と何時ものように笑ってくれるだろうと思っていた将臣の口から出てきた言葉は・・・
「何だ・・・あいつ早すぎだな」の一言で
思わず拳を握った望美の頭に手を置くと「まっ。早いのも考え物だが遅いのは女が大変らしいしな・・・気にするな」と・・・
一人間違った方向に走り、それを納得しニヤッと笑い
そして「俺はアイツよりは楽しませてやれるぜ?」と自慢げに笑い
望美の鉄拳を顔面に受けていた
この家にはまともな奴は居ないのか?と・・・悩んだ望美は
微かに漂う家庭的な香りに
居たよ!!
一人居たよ。と、喜び
駆け込んだ先には知盛のもう一人の弟である銀がおたまを片手に
今、出来上がったばかりの味噌汁の味を見ていて
何て素敵なんだろう
家庭的な男・・・素敵過ぎる
鍋とおたまを手にした男に見惚れる女
少々変かもしれないが・・・
家庭的な事が出来ないわけでもない
ただ面倒で何もしたくない派の望美から見れば銀は最高の相手で
それなのに知盛を選んだ自分はバカだと・・・
アイツに鍋やおたまは一生縁はないだろう・・・と苦笑いし
銀のその姿をジッと見つめ・・・
ついつい頭に浮かんだのは三角巾を頭に
鍋を前におたまを持った知盛の姿
「ぷっ・・・」と、耐え切れずふきだした望美に気付いた銀は
とっておきの笑顔で「望美さん。来てたんですか?」とおたまを手に微笑んでいた。
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