〜にわとり〜  

「先生?最近調子悪いようですね?」
机に向かいやる気のない男を気遣っているようにも見える女


だが女には別に目的があった




するりと脱ぎ捨てたコートの下には何も身につけていない



冷静で冷めた眼をしている男にすり寄って


「私・・・何でも致します・・・」と上目遣いでとっておきのポーズを決めた女はヨシッ!!と思っただろうが・・・



「なら帰れ」と淡々と言い放ち女を払いのけた男は
コートを女に投げつけると女を残し部屋を後にした



「ああ・・・つまらない。アイツのせいだ」と呟いた男の指すアイツとは・・・




今、盛大にクシャミをし「やべっ・・・風邪?」と鼻をすすり


「ちょっと飛ばさないでよ」と同じ職場の友人に小突かれていた




「最近調子悪いみたいね?」


「んー?そうでもないけどね」


調子悪いはずないんだけどな・・・
毎晩のようにつき合わされていたけど最近はお互いに仕事忙しいから会わないし・・・


夜もゆっくり眠れるし



・・・・寝てるよね?
でも・・・何かイライラしてるな・・・と頭を捻り



アイツ・・・浮気してそう・・・
その考えが頭に浮かんでしまったが最後



イライラが頂点に達し



「ごめん。今日付き合えないわ」と友人にそう言うと「お詫びに奢るわ」とオーダー票を手に取りさっさと勘定を済ませた



一人残された友人の思うことは・・・


「・・・帰れって事?・・・これ以上食うなって事?」と呟き
そして「我侭な女だよね・・・」と呆れた顔をした


そんな事を言われているとも思ってもない望美は・・・


態々奢ってやるなんて私って良い奴♪と・・・考えてニヤッと笑い
さて・・・アイツの所に行くかと足を急いだ



「チモー。いないの?チモちゃーん」
まるで子供でも呼んでいるかのような呼びかけに知盛に派手に突き飛ばされたプライドを傷つけられた女が現れ・・・



わざとらしく乱れた服を見せ付けて

「あら・・・知盛さんは出かけてますわよ・・・」と望美に言うと気だるげに微笑んで主の居ない部屋へと戻っていった




「・・・・なに・・・アレ?」
矢張り浮気か?と・・・


何なんだ・・・あの女・・・と暫く考え込んだ望美は


「ムカつく・・・」と呟くと女の入っていった
確かに自分の男のはずの知盛の部屋に突入し




「おらっ!!お前何者?アイツに抱かれたの?」と胸座をつかんで女の頭がガクガク揺れるほどに揺さぶっていた





「な・・・なっ何よ?!ちょっと・・・止めてよ!!」
女がいくら叫んでも切れた望美は聞いてはいない
これを止める事が出来るのは限られた人間だけ・・・



もちろん恋人である知盛と、その兄弟達だけだろうが
肝心の知盛の姿は見えないし


兄弟達も出かけていて今の望美には怖いものなし

と・・・言うか常に怖いものなどない望美だが



今回の望美はいつも以上に強かった


さしずめ・・・
人の迷惑を省みない朝早くから美声を轟かせるニワトリのようで



必死に笑いを堪えていたこの男・・・も



我慢出来なかったのか
望美に痛めつけられている女を気の毒に思ったのか



望美の手から女を救い出すと同時に望美を引き寄せ
そして抱きしめた


「クックッ。何盛ってんだ?」


「邪魔するな!!」

怒り露に睨んだ相手は・・・浮気者だと望美の決め付けている知盛であって

そうなると・・・望美の次なる標的は
か弱く、ずるい女ではなく



知盛である事は間違いないが・・・
とりあえず




「アンタ・・・浮気した?」聞いてみた



そんな望美を見た知盛はクックッと笑うと「さあな」と言って



「確かめれば良いだろ」と望美を抱き上げ




「ちょっと!!下ろしなさいよ!!」と、望美が叫んでも暴れてみても
知盛の力には敵うはずもなく




ニヤリと笑った知盛は「ベットの上にな」と耳元に囁き

ただ呆然と二人を見つめている女に視線を移すと



「邪魔だ」と冷たく言い放ち



「最低の男・・・」と呟いた望美に「クッ。そこが好きなんだろ?」
と、唇を重ね



観念した腕の中の女・・・望美は


「仕方ない。相手してあげるよ」と笑い
そっと背中に手をまわし



まだ居たのか?と女を見・・・


片目を閉じて「こんな奴に惚れたら人生お終いだよ」と笑って


それでも回した腕は


知盛は私だけのものだよ。と独占欲を露にしていた




(C)maria 2005-06 All rights reserved.
TOP↑

template : A Moveable Feast